Web小説紹介:虚斬り平蔵 おっさんと幼女の魍魎退治記

今回紹介するのは「虚斬り平蔵 おっさんと幼女の魍魎退治記」です。

 読了時に勧善懲悪の時代劇を見たような余韻浸れる作品です。

 

舞台は、江渡(江戸)時代。人の負の感情から生まれる虚神という魑魅魍魎が跋扈する世界。酒に博打で己の心を紛らわしていた一人の男が一振りの美しい刀を手に入れるところから始まる痛快、爽快、時代劇!

 

どうでしょう?レビューっぽく書いてみました。

なんというか自分が書きたいものと違いますね。シンプルでいいですが作品を訳しているだけで、己が感じた作品の良さを書けていない気がします。

ということでいつもの読書感想文にいきますよ。

 

最初に感じたのが、良い意味での裏切りですね。

ここ最近の”なろう”の傾向におっさんを主人公に取り敢えず採用しておくというのが多い気がします。まぁ幼女系は昔から多いですよね。

何故おっさんにする必要があったのかという疑問になるものや、強さの証明をするためだけにおっさんにするもの、ようは流行りに乗っかっただけでおっさんの必要がないものが結構あるんです。

物語として本当に必要なのか、おっさんになるまで”どう生きてきたのか”という見えない歴史を活かせるのかということです。少し意味が違ってくるのですが、チェーホフの銃の近いですかね。

 

正直な所、内容を読んで見る前は「また、おっさんか」と期待してませんでした。

それがいい意味で裏切られましたよ。おっさんといっても作中では30代ですけどね。

おっさんというキーワードから連想されるくたびれた感じもありましたし、何故ぶらぶらとしているのか、どうしてそのことに拘るのか、といった歴史を作中でうまく活かせていると思いました。

また、刀の擬人化ではなく、鞘を擬人化しているところも主人公の信念の強さを描写するのに活きてきて、設定と書きたい伝わってきました。作者のあとがきを読んでみると鞘を擬人化の着想から始まっているので、そこで周りの設定やキャラクターの全体図を丁寧に作ったのだと分かるようです。 BLEACHっぽいと思ったのは秘密です。

 

ここに来てやってストーリーの感想をば。

信念は折れていないけど捻くれてしまったおっさんが、一振りの刀である鞘神を拾って悪人をバッタバッタとやっつけていきます。その最中で己が忘れていた大事なことを取り戻して侍になっていくのです。

最初から最後まで読んでいて気持ちいい展開が続きます。予想外の展開でハラハラドキドキといったものはありませんが、キャラクターの行動理念や性格をきちんと書かれているため展開が予想しやすいのです。読んでいて物語の展開が納得出来ますし、そうあるべき!といった展開の気持ちよさを再確認させてくれます。

展開に納得出来ることって非常に大事ですよ。予想外でご都合主義なんて納得できないですからね。

 

例えば、時代劇の”暴れん坊将軍”ってあるじゃないですか?徳川吉宗が町民に扮して、悪人を調査して最終的に「余の顔を忘れたか!」って一括して平伏して終わったり、殺陣が始まりますよね?それで最終的に成敗される。っていう様式美。

これが展開が予想出来てつまらないって人もいると思いますが、そんな人だけではありません。分かりやすい様式美によって描かれる勧善懲悪っていうのは人に受け入れやすいと思うんです。実際私個人も好きですし、1978年から2002年まで放映されたことからも大衆受けすることは明確ですよね。

つまり何が言いたいかと言うと、予想外でなくてもいいということです。だからといって王道を詰め込めば面白くなるという訳ではないのが難しいところですね。

 

本作品のもう一つ気持ちよかったところは作品の終わり方ですね。

余韻の残しつつ、先を展開出来る余地があるので、もっと読みたい!と素直に思わせる終わり方。最後の場面は時代劇のワンシーンであるようで様子が目に浮かびます。

実際に読んでいただければ間違いなく共感していただけると思うので、和風、時代劇が好きな方はどうぞ御覧ください。

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